歴史文化学

歴史文化学プログラム

歴史文化学とは

歴史文化学プログラムは、歴史を専門的に学ぶプログラムです。ひとくちに歴史といっても、世界中のさまざまな地域の人々が、何千年にもわたって繰り広げてきたわけですから、その対象はじつにバラエティに富んでいます。そして、そうした歴史を明らかにするための資料・史料も、古文書や碑文、木簡、絵画、写真や地図、統計、あるいは体験者のインタビューなどなど、じつにさまざまな形をとって私たちの前に蓄積されています。ですから、歴史の研究をしようとするならば、それぞれのテーマに合った資料・史料の性質を理解し、それらを使いこなすスキルを身につけることが、まず必要になってきます。

大学で学ぶ歴史は、高校までの日本史や世界史の授業のように、膨大な事項を暗記していく作業とは異なります。どこかひとつ、自分の興味のある時代・地域・分野を研究テーマとして選び、そのテーマに合った資料・史料や文献を自分で探し、読み込む力を身につけ、自分で研究論文を仕上げていく。このことによって歴史を深く洞察する力を身につける。それが大学で学ぶ歴史学のスタイルなのです。

だからひょっとすると、あなたの研究がこれまでの通説を変えるかもしれない。そんなスリルにも満ちています。新潟大学人文学部の歴史文化学プログラムは、多彩なスタッフを揃え、また他プログラムとの連携も密接で、どんなテーマの歴史を学びたい学生にもきっと満足してもらえるでしょう。

歴史文化学で学べること

  • 正倉院文書・木簡からみる古代国家・王権
  • 戦国期の地域と権力構造
  • 日本近世の地域と交流
  • 日本中世・近世古文書の様式と機能
  • 20 世紀日本社会の歴史を多角的に考える
  • 日本近世・近代古文書整理実習
  • 前近代中国の国家と社会
  • 1910~40 年代における「中国」社会の変化
  • 朝鮮家族史研究
  • 中国史原書文献講読
  • 古代・中世の英雄叙事詩
  • 古代エジプト人とフェニキア人の歴史
  • 西洋美術史
  • ヨーロッパ中世~近代文化史、社会史
  • 現代アメリカの民主主義思想

教員紹介

中林隆之 NAKABAYASHI Takayuki(准教授,日本古代史)

古代国家の形成から確立にいたる政治の動きや、古代の文化や思想、さらには越後・佐渡地域を含む列島内各地の地域社会の特質や個性につい て、唐・新羅・渤海など日本周辺諸国との関係をつねに意識しながら論じま す。ゼミでは、六国史や風土記などの歴史書・地誌、律令・格式などの法制書のみならず、正倉院文書や木簡・墨書土器といった様々な資料を読み込むなかで、古代社会の実相に迫ります。

矢田俊文 YATA Toshifumi(教授,日本中世史)

日本中世史を研究しています。中世史のなかでも戦国期、15世紀末~16 世紀が専門です。この時期の権力構造、物資流通、資料論を研究していま す。研究の対象地域はおもに越後(新潟県)で、人物では上杉謙信・景勝です。また、1498年におこった明応地震の被害を中心とした東海地方の災害史の研究も行っています。2004年10月に起こった中越地震以後は、1828 年三条地震など、近世に起こった地震による被害の研究もはじめています。

原 直史 HARA Naofumi(教授,日本近世史)

江戸時代の都市や商品流通を主な研究対象にしており、地域社会の構造と変容に大きな関心を持っています。「近世」という時代は日本列島におい て、ウェスタン・インパクト以前の伝統的な社会が最も成熟した時代であり、 その時代を探ることは、わたしたちの現在と未来を考えるうえでとても重要な意味を持つと考えています。授業ではしたがって、こうした近世社会を多様な角度から検討しようと心がけています。

中村元 NAKAMURA Moto(准教授,日本近現代史)

日本近現代史の中でも特に都市史を専門としています。これまでは主として20世紀前半期の大都市周辺の都市における空間的・政治的・社会的変化の相互関係に注目し、近代日本における都市形成と「デモクラシー」の関係を研究してきました。今後は時間的には20世紀後半期、空間的には都市周辺の農村にも視野を広げつつ、人々の社会におけるリアルな在り方に即して日本近現代史の全体像を見通す方法について、皆さんと考えていきたいと思っています。

広川佐保 HIROKAWA Saho(准教授,中国近現代史)

20世紀初頭の中国東北やモンゴル地域の歴史、そして日本とアジア関係史について研究しています。中国やモンゴル、台湾の史料館で史料を探索し、歴史の舞台を自らの足で歩くことに努めています。そうすることで史料と現在の人々の暮らしがつながり、今日的な問題を考えるきっかけにもなります。 大学では近現代のアジア史関係の書籍や資料を通読していますが、教室を飛び出してフィールドを歩くことをすすめています。アジア近現代史には、まだ研究されていない分野が多く残されています。皆さんのオリジナルな研究や発見を期待しています。

山内民博 YAMAUCHI Tamihiro(准教授,韓国・朝鮮史)

韓国の田舎をまわりながら、朝鮮王朝時代の社会について研究しています。 授業では、古代の新羅・高句麗・百済から現代の韓国・北朝鮮まで、家族や村落、国際関係など様々な面から朝鮮社会の歴史的性格を追求していきま す。古くから中国・日本と密接な交流関係をもちつつ、独自の世界を形成してきた朝鮮半島の歴史を学ぶことは、新たな視点から東アジアや日本について考える契機にもなることでしょう。

高橋秀樹 TAKAHASHI Hideki(教授,西洋古代史・西洋古典学)

西洋の古代や中世を研究しています。今年の授業で取り上げているのは、 古代エジプトの歴史・文化・神話、古代ギリシアの歴史・文化・神話、中世の英雄伝説(アーサー王、ローラン、エル・シッド他)、ケルト文化などです。古い時代の歴史や文化は、まだまだ謎が多く、新しい発見や研究方法によってそれまでの研究が大きく変わることがある、エキサイティングな分野です。このおもしろさを多くの学生諸君に伝えたいと願っています。

細田あや子 HOSODA Ayako(准教授,西洋中性史・西洋美術史)

ヨーロッパ中世の文化史に関心を持ち、とくに美術作品とキリスト教文化との関係を探っています。生と死、天国と地獄、天使と悪魔、聖杯の謎など、怪しげなものにひかれ、それらがどのように表現されているのか考察中です。授業では、ロマネスクの素朴な聖母マリアさまの彫刻から、ゴシック期の大聖堂建築、ルネサンスの巨匠たちやフェルメールやレンブラント、さらに近現代の芸術家まで視野をひろげつつ、学生とともに美術史のおもしろさを学んでいます。

高橋康浩 TAKAHASHI Yasuhiro(准教授,西欧政治思想史)

専門は西欧政治思想史、アメリカ思想史。キリスト教神学思想史にも関心 があり、アメリカにおける宗教と政治の関係、現代民主主義の政治理論を中心にして研究をしています。演習においては、アメリカ史を舞台に上記のテー マや、戦争と平和といった政治外交史上のテーマ、人種問題などのアメリカ国内のテーマについても考察の対象にしていきたいと考えています。

研究紹介

西洋古代の「こころ」と「かたち」

高橋 秀樹(教授)

私の専門は西洋古代史です。古代のギリシアやエジプトの歴史伝承や英雄叙事詩、伝説、神話などの資料を扱っています。これらはむしろ文学で扱うものなのではないかと思う方もいるかもしれません。しかし、実は公文書や考古学的遺物からはわかりにくい当時の人々の価値観や世界観、理想とされた振る舞いかたを、これらのものからうかがい知ることができ、広い意味で「史料」として活用することができるのです。

古い時代の歴史を繙くと、人々が思いがけない行動をとっていることがしばしばあり、現代の私たちの感覚では理解しがたいことが少なくありません。とりわけ古代ギリシアの場合、現代にも影響を与えた民主主義の原理を生み出し、現代の諸学の基礎となる合理的精神を培っていることもあって、現代人にも「わかりやすい」古代人であるような印象が持たれがちです。ところが、その古代ギリシア人が、一見したところとても乱暴な為政者を讃えていたり、国家を挙げて宗教儀礼に勤しんでいたりして、しかもそれに全く矛盾を感じていなかったりします。こういった古代人の心の仕組みが分からなければ、当時の人々の行動の動機や歴史的な出来事が起こった原因が本当の意味では理解できたことになりません。このような深い謎を解きほぐす手がかりを与えてくれるのが、彼らが大切に語り継いだ武人の勲や、神々についての朗誦、秘話・珍話の類です。当然のことですが、古代は現代の我々から最も時間的距離のある異質な時代です。我々から最も遠い人々の心に触れる驚異の体験をぜひ多くの学生諸君に味わってもらいたいと思います。

また、私は年に何回か海外調査を行っていますが、現場・現物が拓いてくれる知見や感動は、文字から得られる情報や知識とはまた異なる眼差しを啓いてくれます。実際に学生諸君が渡航するのは大変なので、授業では映像・図版資料を多く用い、このような点でも受講生が理解を深めていけるよう努めています。

日本近現代史研究の可能性について

中村 元(准教授)

私は日本近現代史、その中でも都市史を専門としています。これまでは20世紀前期の都市において格差を問題にした人たち、その中でも従来注目されてこなかった土木労働者や露店商といった人たちに焦点を合わせて研究を行なってきました。研究の中では、格差を問題とした土木労働者のリーダーであった人物が書いた小説(仲木屋鉱一『失業登録者の手記』。現在は国会図書館近代デジタルライブラリで読むことが可能です)や、露店商の人々が出していた新聞などに出会い、これらの史料に基づいて、従来注目されてこなかった人々の視点から、彼らが生きた社会の歴史的変化にアプローチすることを試みてきました。

現在は上記の研究を継続する一方で、「動物」をめぐる歴史的変化について研究を進めたいと考えています。具体的には、新潟県内 に存在する「忠犬タマ公」像をめぐる歴史的変化に注目し、そこから見える同時代の社会の特質を考察してみたいと考えています。

以上のように、私が関心をもつ対象は、「日本近現代史」という言葉から通常想像される内容(たとえば明治維新、大正デモクラシー、アジア・太平洋戦争etc)と比べるとずいぶんマイナーであるような印象をもたれるかもしれません。しかしこうした一見マイナーな対象でも その変化に目を凝らすと、同時代の社会の全体的な変化との連関が浮かび上がってきます。逆に言えばこうしたマイナーな対象の分析から、如何に同時代の社会の歴史的変化を析出できるかが、腕の見せ所だということもできるでしょう。

日本近現代史では、明治以降最近までの日本における政治や社会や文化など様々な領域の歴史的変化が考察の対象になり得ます。特に20世紀後期については、未着手のテーマが多くあります。勿論歴史学という学問の性質上、変化を記録した歴史資料(史料)が無いテーマについては困難がありますが、日本近現代史研究が多くの可能性に満ちた分野であることは確かです。

Student Voice

美術から歴史を考える

西洋史 田邉 郁美

文化史に、皆さんはどんな印象を抱いていますか?暗記に苦労して面倒に感じる人もいるのではないでしょうか。私は西洋中世史を専攻し、文化史の一部である美術史について、キリスト教の影響が特徴的な美術を研究しています。歴史と美術は一見つながりにくいと感じるかもしれませんが、美術作品には当時の人々の精神や社会状況が反映されているものが多く、美術史とは文字で示されていない歴史といえます。一度は見たことがあると思われるロマネスクやゴシックの教会堂は好例で、そこには彫刻・絵画など、キリスト教を篤く信仰した当時の精神や生活を読み解くヒントがあふれています。授業では、中世の政治・経済・宗教・生活などを皆と議論しながら理解を深めています。制作当時の社会について学び、改めて美術と向き合う時、暗記するだけでは気付けない、 歴史を語る大切な史料であることを実感できるでしょう。美術を通じて、今までとは少し違った視点から歴史を学んでみませんか?

中国近代史を学んで

アジア史 田村 麻奈美

皆さんは“中国近代史”と聞くとどのようなものを思い浮かべるでしょうか?中国近代史とは、アヘン戦争から中華人民共和国が成立するまでの時代を指しています。私は、人文学部では歴史文化学に所属し、中国近代史を専攻しています。中国史や中国語の学習を深めるために、人文学部の交流協定を利用して北京大学歴史学系へ1年間留学しました。北京で私は、アロー戦争で破壊された円明園を訪問することが出来ました。今まで本でしか見たことのなかった円明園を実際に見ると、興奮と感動とが一度に押し寄せ、ゾクゾクとワクワクが混ざったような本当に不思議な気分になり、中国近代史がぐっと身近に感じられるようになりました。20世紀初頭の中国は、良くも悪くも日本との結びつきが強く、当時活躍していた人々は日本と何らかの関係があり、思わぬところに発見があったりします。皆さんも私たちと一緒に遠くて近い中国を感じてみませんか?

どのように歴史を描くのか

日本史 長沢 利紀

私が所属する日本近現代史ゼミでは論文や史料の読解を通じて議論を行っています。学生自身の関心に基づいて発表するので、ゼミ内でも多様な視点から議論が交わされます。テーマは政治、思想、社会など多岐に渡ります。私は 昭和30年代の集団就職に関心があります。集団就職は都市部からの集団求人を受けて、地方の中学卒業生がまとめて都市部に移動して就職する現象です。新潟県からも就職に際して多くの中卒者が都市部へ移動していきました。10年ほどで見られなくなるこの現象について新潟県ではどのような制度が見られるのか、その経過を追っていきたいです。教科書の内容を学び覚えていく高校に対して、大学では時に学ぶ題材も自分自身で探してくることなど学びへの主体性が問われることになります。大学での学びは歴史そのものを学ぶ他、既に蓄積された研究から「どのように歴史を描くのか」に着目できる点で歴史学の醍醐味を味わうことができます。

さらに詳しいリンク


教育・研究