心理・人間学

心理・人間学プログラム

心理・人間学とは

心理・人間学プログラムは、人間とその心の解明をめざして、心理学と人間学の分野を学ぶプログラムです。

人間の行動やその心の働きをあつかう心理学分野では、 実験や調査などの実証的方法によってこれらの問題にアプ ローチします。心理学実験や調査に関わる基本的技能を身につけるとともに、知覚・認知、記憶・学習、動機づけ、性格、 対人関係や集団の心理、心理学の応用など、幅広い領域にわたる心理学の知識の習得を目指します。

人間学分野には、哲学・西洋哲学史、倫理学、宗教思想史、科学思想史、言語学の学問領域があります。人間の心(精神)は、日常的な言語活動から哲学的な思考や科学的な探究にいたるまで、そして道徳的な善悪の判断から宗教的な信仰にいたるまで、じつに多様な精神的所産を生み出してきました。人間学分野では、主として外国語で書かれた原典文献の読解をつうじて、これら哲学、宗教、科学、言語などの人間の知的な営みの原理を解き明かし、人間性について理解を深めていきます。 このプログラムは、人間が直面するさまざまな課題に対して、 人間について の深い理解に裏づけられた科学的分析と思考ができるような人材の育成をめざします。

心理・人間学で学べること

  • 人間とは何か?
  • 学習と記憶のしくみを知る
  • 集団のなかの心の動き
  • 欲求の心理を探る
  • 哲学的に思考し、議論する
  • 宗教を思想的に理解する
  • 哲学や思想の歴史を学ぶ
  • 人間の言語の仕組みを解明する
  • 古典語(ラテン語など)を学ぶ
  • 人間の認知のメカニズムを探る
  • 性格や個性を測る
  • 子どもの心の発達を知る
  • ひとはなぜ誤るのか?
  • 人類の思想的遺産を読む
  • 科学的な方法論とは何か?
  • 生命と環境の倫理学へ
  • 言語と行動の関係を知る

教員紹介

鈴木光太郎 SUZUKI Kohtaro (教授,実験心理学)

人間や動物の感覚や知覚、認知や行動を研究しています。とくに現在の関心は、動物と比較して、ヒトにはどのような心の性質や行動傾向があるのか、ヒトの心の性質は長い進化の時間のなかでどのように形作られてきたのかにあります。学部では、心理学実験のほか、認知と行動、動機づけの心理学、比較心理学といった授業科目を担当しています。ヒトの心の研究は、やればやるほどおもしろいよ!

白井 述 SHIRAI Nobu (准教授,知覚・発達心理学)

主に運動視(動いているものを視覚的に認識する能力)の発達について研究しています。これまでの研究から、生後数ヶ月の赤ちゃんも大人と良く似た運動視特性を持つことを明らかにしました。現在は、運動視と移動行動(ハイハイやつかまり歩き)の発達の関係に興味を持っています。また運動視の進化的側面にも関心があり、学外の研究機関と協力してニホンザル等を対象とした研究も行っています。

福島 治 FUKUSHIMA Osamu (准教授,社会心理学)

講義では、自尊心や魅力、恋愛や集団心理などが話題の中心です。身近な事柄なので、自らの経験と関連させて聴く学生さんも多いようです。人格心理学も教えています。こちらでは、性格についての様々な理論を話しています。専門家の考える性格は、一筋縄ではとらえきれませんが、そこから考え方の多様性を学んでほしいと思っています。研究テーマは自己知識や対人葛藤です。皆さんの入学を心待ちにしています。

工藤信雄 KUDOH Nobuo (准教授,応用心理学)

ヒトはどのようにして外界をとらえ、身体の動きを通して外界に働きかけているのか。認知と運動を支える仕組みを探るのが現在の研究テーマです。授業では、航空管制や各種プラント、交通場面で起こる事故やヒューマンエラーの分析を通して、人間の知覚・認知特性や、作業および生活空間の最適な設計を考えています。心理学は、生物学やコンピュータ科学はもちろんのこと、経済活動などとも関わりが深いため、実に奥が深い!

栗原 隆 KURIHARA Takashi (教授, 人間学・倫理学)

ヘーゲルを中心とするドイツ観念論の思潮を掘り起こしながら、「疑う」ことに思索の原動力を求めるとともに、〈自分とは何か〉を知ろうとする知的な営みにこそ、〈主体〉の成り立ちがあることを研究しています。他方で、生命倫理や環境倫理の問題に即しながら、私たちは自分の身体に自由に手を加えていいのか、エゴイズムはなぜいけないのか、私たちの自由に限界はないのかなど、身近な倫理的な問題を解き明かそうとしています。

宮﨑裕助 MIYAZAKI Yusuke (准教授, 哲学・現代思想)

専門はヨーロッパの現代哲学です。関連して美学、倫理学、言語や政治の理論等も幅広く研究しています。現代は多様な世界観が混沌としてせめぎ合い、将来を見通すことが本当に難しくなっています。迷宮のように入り組んだ現代思想の水先案内人としての役目を果たすことで、学生の皆さんには、思想や哲学の面白さに触れ、次の時代を生き抜くための知をつかみとってもらえればと願っています。

井山弘幸 IYAMA Hiroyuki (教授, 科学史・科学基礎論)

研究と称するには些か抵抗を覚えるけれど、在籍した約30年間を振り返ると結構いろいろなことに首をつっこんでいる。助手時代は「18-19世紀の英国の自然哲学史」、その後は「文学の中の科学」という新領域、特に「ユートピア思想と科学」「宮澤賢治と科学」「サイエンス・イメージ論」の文献を読み漁った。もとより「科学的合理性」の主題とは関わってきたが、途中から「偶然論」へと問題転移した。近年は「お笑い」の理論・事例研究で忙しい。

青柳かおる AOYAGI Kaoru (准教授, 宗教学・イスラーム思想史)

ガザーリー(1111年没)を中心に、アラビア語の文献を読みながら、古典時代のイスラーム思想史、とくにスーフィズム(神秘主義)を研究しています。ガザーリーの「婚姻作法の書」を翻訳し、婚姻、女性、セクシュアリティーについてスーフィズムの視点から研究してきました。最近は、現代のイスラーム法学者の文献も分析し、古典時代から現代までのイスラームの女性問題および生命倫理問題の変遷を明らかにしたいと考えています。

江畑冬生 EBATA Fuyuki (准教授, 言語学・言語類型論)

研究対象は言語です。言語は物ではないので、実際に手にとって調べるわけにはいきません。人間の言語活動を観察する必要があります。人間が意思を相手に伝える際、言語が手段になります。物理的には音声が用いられます。音声が対話者の耳に入り意味として理解されたときにはじめて、伝達が成立します。発した瞬間に消えてしまう音声と、客観的に捉える事が難しい意味。ある種つかみどころのない音声と意味を、なんとか科学的に解明しようするのが言語学です。言語は我々にとって身近すぎる存在ですが、ふだん意識されないその構造には驚くべき緻密さが見られるのです。

太田 紘史 OTA Koji (准教授, 認知哲学)

物質のカタマリでしかないはずの脳に、なぜ意識や自己が伴っているのか。物理法則が支配しているこの世界で、人間の意思や選択は本当に自由だと言えるのだろうか。人が善悪について考えるとき、どのような思考のメカニズムが働いているのか、そしてそれは信頼に値するものなのか--。心と行動のフシギについて哲学的かつ科学的に考えてみたい、という学生さんをお待ちしています。

研究紹介

科学としての心理学

鈴木 光太郎(教授)

1879年、ドイツ。科学としての心理学が産声をあげます。ヴィルヘルム・ヴントがライプツィヒ大学に 最初の心理学教室を創設したのです。それまでも心理学という学問はありましたが、心理学の実験設備が揃い、カリキュラムの整った科学としての心理学が誕生したのはこの時です。これ以降、それほど間をおかずに、ベルリンやハーヴァードやケンブリッジなど、世界各地の有名大学に心理学の教室ができあがっていきます。日本では、1903年に東大に心理学教室が創設されました。

心理学は、「父なる哲学と母なる生理学」のもとに誕生したと言われるように、その出発点から、人文科学的な要素と自然科学的な要素を兼ね備えていまし た(公式に最初の心理学者となったヴントも、そのキャリアを生理学者として始めていました)。心理学が自然科学的だというのは、研究を進める際に実験科学の方法論を採用しているからです。さらに、人間の心のはたらきは集団や社会の影響を強く受けますので、心理学は社会科学的な要素も備えています。このように、心理学は人文・社会・自然科学のどこにでも位置づけることのできる学問です。日本では心理学を人文科学の一領域と位置づけていますが、イギリスや台湾などのように、理学部のなかに心理学を入れている国もあります。

さて、わが新潟大学の心理学教室ですが、誕生は1920年です。もっと正確に言うと、新潟大学の人・法・経・理という4学部の前身である旧制新潟高校が創立されるのが1919年。その翌年に、心理学の教授として黒田亮が着任し、心理学教室を作るのです。彼は、動物の聴覚についてすぐれた実験的研究を行ない、『勘の研究』、『動物心理学』、『支那心理思想史』などの名著を残しました。彼が授業や実験で用いた装置は、いまも20数点が現存します。

科学的心理学の誕生から今年で136年。心理学は、脳科学、生物学、認知科学など隣接領域の成果も取り込みながら着実に前進を続け、 その結果人間や動物の心のメカニズムについて多くのことがわかってきました。とりわけ実験装置や研究手法についてはこの20年で目覚ましい発展があり、研究の最前線はいまも急速に動いています。

心理学の実際の姿は、あなたがいま頭のなかに描いている文系的な心理 学のイメージとはかなり違っています。どの点でどのように違うのか、それは入学してからのお楽しみということにしておきましょう。新潟大学では、心理学のたくさんの講義や演習があなたを待っています。

言語--身近にひそむ未知

江畑 冬生(准教授)

ラジオやインターネットなどを用いて、まったく知らない言語の音声に耳を傾けてみてください。「意味」が分からないでしょう。この時に私たちは、言語とは、物理的には単なる音声の連なりに過ぎないことを自覚するのです。話し手の発した音声が聞き手の耳に入り意思が伝わる(時には聞き手の心を揺さぶる)こと、それ自体が不思議であり、客観的に捉えにくい現象なのです。

言語学が何をする学問なのか、一口に説明することは容易ではありません。言語学の究極の目標は、人間言語全般の解明、すなわち世界の諸言語の仕組みを明らかにすることと言えます。世界には、6,000から8,000もの異なる言語が話されています。この中に含まれる話し手の数が少ない言語や、あるいは小さな方言なども、研究対象として、英語や中国語などの大言語と等しい価値を持っています。それぞれが独自の「仕組み」を有するからです。

私はこれまで、東シベリアで話されているサハ語の研究を続けてきました。サハ語の話者数は、約45万人と新潟市の人口の半分程度にすぎません。しかしこの言語もやはり独自の緻密な構造を備えており、さらには祖先の言語の状態を知るための手掛りを内包しています。最近になって私は、トゥバ語という同じくシベリアで話される言語(話者数は約28万人)の研究も始めました。こうした「小さな」言語の仕組みを調べていると、今までは見えなかった日本語や朝鮮語などの「大きな」言語の構造が見えやすくなることがあります。ここに、異なる言語を比較対照することの意義があります。シベリアから朝鮮半島・日本列島に連なる諸言語について、その共通点と相違点を明らかにしたい。これが近年の私の目標です。

言語学を学ぶことは、これまで想像すらしなかった価値観に触れる良い機会でもあります。世界の言語の多様性に触れ、あるいは意外な共通点を見出しつつ、「人間言語とは何か」という問いに立ち向かいましょう。

Student Voice

心理学から考える

心理学 吉田 瑞希

皆さんは、心理学を勉強すれば「人の心が読めるようになる」と思っていませんか? 心理学は、心の働きや人の行動を科学的に探究する学問で、皆さんが持っているイメージとちょっと違うかもしれません。例を挙げてみます。「目の前のテレビ画面では 二人の女性が他愛もない会話をしています。もし、途中から二人の服が入れ替わったとしたら、あなたはそれに気づくでしょうか?」多くの人が「絶対に気づく」と答えると思いますが、実はほとんどの人が気づきません。注意して見ているはずなのに、変化を見落とすこの現象を「変化盲」と言います。おもしろいのは、自分は見落しをするはずがないという、根拠のない自信を誰もが強く持っていることです。心理学で得た知識は日常生活でも応用が利き、別の視点から物事を考えることにも繋がります。心理学は考える力を育てる学問なのです。心理学の魅力や楽しさを皆さんに知ってもらえたら嬉しいです。

言語を客観的に捉える

言語学 朝日 駿

皆さんは言語学と聞いて何を想像しますか? 学校で習った文法を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、言語学の対象は学校で習うような文法だけではありません。その対象は、音声、文字、意味、語構成、語の使い方、方言など多岐に渡ります。対象とする言語は日本語や西洋言語だけではありません。アフリカや南米の少数言語も、英語のように世界中で話されている言語と同じように研究の対象となります。私たちの母語である日本語でさえ説明をすることは容易ではありません。例えば、「寝る」と「眠る」の違いは何でしょうか? 頭では理解していても、それを説明しようとすると一筋縄ではいかないことが多いのです。駅名を見てみると、新橋(shimbashi) のように「ん」がnではなくmで書かれているものがあります。なぜでしょうか? 当たり前のように使用している言語にも新たな発見があふれています。そこが言語学のおもしろさではないでしょうか。

哲学という学問

哲学 青田 由実香

「なんでも学べるところだよ」。先生からのこの言葉に一瞬で惹きつけられ、私は哲学を学ぶことにしました。私が当初哲学に抱いていたイメージは、堅そうで、地味で、とにかく難しい学問といったものでした。しかし、実際に学び始めると、そのイメージを覆すように興味を惹かれる内容ばかりで、日々自分の中に新しい思想や知識が入ってくることに、面白さを感じています。取り扱うテーマは、先生がおっしゃっていた通り、「善」や「自由」「愛」「美」「理性」「心」「意識」「動物」「物語」などここに挙げきることができないほど多岐にわたります。その中で、自分が興味のあるテーマについて深く考察していくのがこの哲学分 野で行っている学問というわけです。私自身寝ることが好きで、その時によく見る「夢」について興味があり、卒業論文は「夢」と「想像」について執筆する予定です。なんでも学べる哲学をぜひ私たちと一緒に学びましょう!

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