人文学部学生プロジェクトインタビュー「阿部昭典」

阿部先生の研究内容について

学生:今回は、阿部先生が新潟大学に赴任して一年目ということで、インタビューさせていただきます。よろしくお願いします。最初に先生の研究内容について教えていただきたいと思います。私は先生の担当する『考古学概説B』に出席しているのですが、授業内容から、先生は考古学の中でも比較的古い時代を扱っている印象を受けました。

阿部先生(以下阿部):そうですね、私は縄文時代の研究をしています。時間幅はありますが、だいたい一万五千年~三千年前という範囲でしょうか。

学生:その中でも特にどのような研究を行っているのですか?

阿部:研究している地域は、新潟・東北地方・北関東など主に北日本で、時期は中期・後期という縄文時代の中でもどちらかというと後半を対象にしています。縄文時代の文化や社会にどのような特色があって、それがどう変化するのかについて研究しています。特に縄文時代の中期~後期は、縄文文化のなかでも変化が大きい時期で、歴史時代で言えば江戸時代~明治時代くらいの大きな変化かもしれません。例えがいいかわかりませんけど(笑)とにかく変化が大きい時期なので、その背景がどのようなものなのか考えています。おもに縄文土器の器種、竪穴住居の住居構造、また環状列石という30メートルから50メートルくらいの大きな構築物があるんですが、その環状列石の出現から拡散における集落構造の変化、それから精神遺物(遺跡から出土・発見されたもの。縄文人の精神文化を表す。)などですね。土偶や石棒など、そういったモノの変化を通して、縄文時代の中期~後期においてどういう変化があったのか研究しています。

 

学生:研究のフィールドを新潟や東北地方にした理由を教えてください。

阿部:もともと秋田県にある大湯環状列石というものに興味がありました。それに加えて、私は大学卒業後の平成8年から新潟県の津南町というところで発掘調査に関わっており、新潟での発掘調査資料の整理作業や報告書の作成を行ってきました。そういうこともあって新潟や東北地方をフィールドにするようになりました。
調査に携わった津南町の遺跡は、現在ではすべてが水田になっていて遺跡は残っていませんが、そこで発見された遺物は「なじょもん」という施設や民俗資料館に展示されています。

学生:そうなんですか。てっきり先生のご出身が新潟や東北地方なのかと思っていました。

阿部:まぁ、出身が山形なので多少思い入れはありますが(笑)

 

これまでの活動

学生:平成8年から新潟県の発掘調査に携わっているというお話がありましたが、先生は新潟大学に赴任するまで、他にどのような活動をされていたのですか?

阿部:大学から大学院まで國學院大學にいました。その後、そこで非常勤講師として働いたり、研究成果を博物館の展示に反映させるという大学の研究プロジェクトに参加したりしていました。岩手県一戸町御所野縄文博物館で嘱託研究員をしていた頃には、研究として自分で土器を作り煮炊き実験をしたことがありました。2日間で土器を6個作ったこともあります。國學院大學では授業のなかで学生達と土偶を作ったこともあります(笑)

学生:土器を自分で作ってみる・・・すごいですね!

阿部:それほどでもありませんが、工作は人より得意な方だと思います(笑)土器を作ることで、遺物を見るときにどのように製作されて、どう使われていたのかを理解することができるのです。例えば煮炊きしてみて、どういったもので吹きこぼれがおきるのかということや、煤がどう付着するのかなど。

学生:今まで何を煮炊きしたのですか?

阿部:トチの実、きのこ、鮭、あとイノシシの肉の代わりとして豚肉など、先行研究をもとにしてやってみました。

学生:煮炊きしたものは食べたのですか?(笑)

阿部:食べましたよ。塩などで味付けして(笑)

学生:縄文人も味付けしていたのでしょうか?

阿部:海岸部なら塩を使っていたかもしれませんね。
他の活動として、先ほど話した津南町の「なじょもん」の企画展が2年に一度くらいあって、最近では2012年に、三十稲場式という地味な土器があるんですが、それをテーマとした企画展とシンポジウムに関わりました。

 

研究で使用する土器を作っています!

 

新潟大学で担当している授業について

学生:先生は新潟大学ではどのような授業を担当されていますか?

阿部:あまり沢山授業は担当していないのですが・・・3,4年生向けの『日本原始社会論B』という授業では、縄文時代を中心に、総合的に文化や社会について、その研究方法について扱っており、『考古学概説B』の方では、どちらかというと方法論を重視した内容になっていますね。両方とも考古学専攻生以外の学生も授業を受けているので、そういった学生にもわかりやすいように説明するように心がけていますが、難しいですね(笑)

特に先史考古学は文献が無いので、単に歴史的な事象を説明するのではなく、人類学的要素が強いので、人類とは何か・人とは何かという部分を研究する時があります。そういった視点で現代のものを見るときに考古学的視点が生きてくるような授業を心がけています。

学生:なるほど。考古学は人類学をはじめとして自然科学など他分野とも関係しているのですか?

阿部:そうですね。民俗学と関わる部分は文献を使って調べたりしますが、分析は主に自然科学の研究者に依頼しています。考古学に関わる分野で特に大切なのは地質学ですね。堆積状況を理解するために自分で土を観察したり、石を鑑定できないといけません。たとえば地質学の研究者にレクチャーしてもらって勉強します。完璧にはわかりませんが(笑)先史時代は文献が無く情報も少ないので、いろいろな分野の協力や援用をして、できるだけ情報を抽出することが必要です。人類学・自然科学・民俗学・地質学・歴史学・建築学・・・様々な分野が関連しています。

学生:考古学は発掘調査といった作業も多いですよね。

阿部:そうですね。最近では、2012年には國學院大學で発掘実習の指導を担当して、その時は秋田の配石遺構の調査でした。天候にも恵まれた良い実習でした。他には年に10日くらい新潟にある黒姫洞窟の洞窟調査をしていまして、今年は台風の影響もあり発掘期間中はずっと雨だったのでちょっとつらかったですね。でも、いろいろな地域から集まった人たちとの発掘調査なので楽しかったですよ。

 

大学生の頃について

学生:今までのお話のように、様々な場で発掘調査や研究に関わっている先生ですが、どんな学生生活を過ごしていたのですか?

阿部:高校生の頃から歴史には興味がありました。大学生時代は史学科でした。部活は軟式野球部に所属していて、勉強よりも野球に力をいれていました(笑)最近は野球をする機会が無くて残念です。
史学科の考古学専攻でしたが、比較的考古学の勉強を始めたのが遅かったんです。もともと専攻はしていましたが、授業が考古学の学史ばかりだったので、思ってたより面白くないなと最初は感じていました。でも、大学3年生の時に授業の一環で発掘実習に参加して考古学の面白さを感じ、そこから真面目に勉強し始めました。卒業論文では秋田県にある大湯環状列石について研究しました。

学生:学生の頃から発掘調査が好きだったのですね。

阿部:発掘自体は楽しいですね。でもやっぱり大変で、大規模な調査だと4ヶ月ほど調査を続ける時もあるので、もう一回そのような調査をするとなるとつらいかなと思います。

学生:先生は学部生の頃から考古学専攻でしたが、研究者の道を選んだのはなぜですか?

阿部:なんですかね・・・普通に就職するよりも、もう少し考古学を勉強したいなと思って大学院の博士課程に進んで、気づいたらなっていたという感じですかね(笑)

学生:先生は縄文時代つまり日本の考古学を専門に研究なさっていますが、海外の考古学に興味は?

阿部:もともとは海外の考古学にも興味がありましたが、大学で縄文時代について学んでいたことや、指導教官であった先生が縄文時代を専門に研究なさっていたということもあり、縄文時代を専門に扱うようになりました。

 

高校生へのメッセージ

学生:最後に、考古学に興味を持っている、或いは新潟大学を受験しようと考えている高校生へメッセージをお願いします。

阿部:考古学を研究していて面白いのは、文献が無い時代のモノからどういうことが読み取れるかというところです。モノ自体は何も語りませんが、ある人はこう読み取ったけど、自分はこう読み取れるということで、そこから新たな発見があるところがいいですね。調査を経て新しい発見があるのも楽しいですが、研究をして新しい発見をしたり、他の人が読み取れなかったことを自分が発見することができたり、論理的に組み立てて検証し、人を納得させることができるのが魅力だと思います。人類の歴史や自分が住んでいるところについて知っていれば、自分自身の社会を見る目も変わってくることにつながるでしょう。考古学にしろ何にしろ、学問は突き詰めていけば面白いと思うし、学問でもそれ以外でも、大学に入って興味をひかれるものを見つけてもらえればと思いますね。

 

阿部先生手作りの土器を見せていただきました(^^)

研究室の本棚に……人骨の標本発見!

 

インタビューを終えて

阿部先生の専門である縄文時代の考古学の研究の様子や、新潟県との発掘調査を通してのつながりを教えていただくことができました。落ち着いた様子でインタビューに答えているなかにも、阿部先生の発掘が好きな面や実際に土器を作って研究したお話など、考古学への熱い情熱を感じました!

担当:鵜野梨奈(2年)、田邉郁美(2年) 

 

阿部昭典(あべ あきのり)先生
社会・地域文化学プログラム
専門は考古学。主に縄文時代の中期~後期を対象に、土器・竪穴住居・集落構造・環状列石・精神遺物などから先史時代の文化や社会の変化とその背景を探っている。


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