人文学部学生プロジェクトインタビュー「中本真人」

日時:2014年10月28日(火)10:00~11:30
場所:総合教育研究棟A棟4階
インタビュアー:島守一仁(社会地域文化2年)高嶋美佳(社会地域文化2年)
インタビュイー:中本真人先生(社会・地域文化准教授)

中本先生の研究内容について

学生:よろしくお願いします。まず、研究内容について教えていただけるでしょうか。

中本:人文学部では「芸能論」を担当しています。「芸能」というと、どのようなイメージを持たれるでしょうか。まずは「芸能人」や「芸能界」などの言葉がすぐ浮かぶのではないかと思います。もちろんそういうことも含みますが、これまでに私が研究対象としてきたのは、特に古代から中世までの日本の芸能です。その中でも特に朝廷ですね。天皇と貴族を中心とする貴族社会の芸能に関心があります。内裏の中などで行われた「宮廷の御神楽」をこれまでずっと研究しています。その研究成果の一部は、平成25年『宮廷御神楽芸能史』という本にまとめました。

芸能について丁寧に語る中本先生

芸能について丁寧に語る中本先生

 

これまでの経歴

学生:これまでのご経歴を簡単に教えてください。

中本:私の出身は奈良県で、大学入学まで奈良市で過ごしました。奈良にいるころから歴史や文学に関心があって、大学に行ったら勉強したいなと思っていました。入学した慶應義塾大学では、国文学を専攻しました。特に古い時代の『万葉集』や『古事記』などを勉強したいなと思って、卒業論文も上代文学を中心とするテーマで書いたんですね。大学院に行ってからは、自分の指導教授が古い時代の芸能を研究されていたということもあり、芸能や歌謡にも関心が広がって、やがて宮廷の御神楽について研究するようになりました。横浜と東京には13年間住んで、この4月から新潟に赴任しました。

学生:奈良県で過ごされている間に歴史や文学に興味を示されたきっかけというのはどういったものだったのでしょうか。

中本:奈良には歴史に関わるものが身近にたくさんあります。高校生のころから、寺社仏閣や仏教美術を訪ねるのが好きでした。奈良には、学校帰りに立ち寄れるようなところにも、国宝や世界遺産の寺社仏閣がたくさんあるんですね。たとえば、私が通っていた高校の最寄り駅から路線バスが出ていて、何とそのバスが法隆寺や唐招提寺にも行きます。高校生だから定期券を持ってるでしょ。それを使えばいろんなところに行けたんですね。それで、あちこちの寺や仏教美術をみていくうちに、次第に奈良を舞台とした上代文学に関心を持つようになりました。そんなことをしながら高校生のころを過ごしたんですが、奈良や京都を歩き回った経験が、今のフィールドワークに確実につながっていると思います。高校生なので自動車は運転できませんし、電車とバスを使うしかないんで、目的地までむちゃくちゃ歩くわけだけど、そうやってお寺や神社を目指して歩き回ることが、今から考えてみるとフィールドワークの基礎というか、勉強になったのかなと思います。

俳人、中本先生!

学生:中本先生は俳句を詠まれるということですが、俳句を始めた時期はいつだったのですか?

中本:大学入ってからですね。大学生のころから俳句雑誌に作品を発表してきました。平成23年には『庭燎』という句集を出版しています。新潟大学は、もともとは新潟医科大学ですが、そのころに高野素十と中田みづほという俳人としてもよく知られた教授がいました。特に素十は新潟医科大学の学長も務めているのですが、俳人としても国語の教科書に作品が載っているほど有名な人です。素十の代表作に「ひつぱれる糸まつすぐや甲虫」という句があります。中学生か高校生のときに、国語の資料集でみつけて、いい句だなと思った覚えがあります。近代の俳句では非常に大きな存在なんですけど、有名な俳人が新潟大学の先輩の先生にいて、その大学に自分も教師として、また俳人として来ることになったというのは、とても嬉しいことですね。大学生のころから国文学が専門だったこともあって、言葉にはとても関心があります。ですから、新潟ではどんな言葉が使われているかとか、最近は佐渡にも行くので佐渡の言葉にも関心があります。芸能の調査をしながら、新潟の言葉にも関心を広げて勉強をしているところです。

学生:佐渡に行かれるということでしたが、佐渡にはどんなことをされに行かれるのですか?

中本:よく聞いてくれました。1つは「表現プロジェクト演習Q」の「佐渡のお祭りに参加しよう!」という授業で、学生15人と民俗学の池田哲夫先生、ロシア文学の鈴木正美先生と一緒に参加しました。これはどういう授業かというと、佐渡に鬼太鼓(おんでこ)という民俗芸能があるんですけれども、それを学生が習得してお祭りに参加するという内容です。具体的には、4泊5日佐渡の赤泊というところに合宿し、最初の3日間はひたすら太鼓の練習をします。

学生:これは何月に行われたのですか?

中本: 9月の12~16日の5日間で、お祭りの日は15日です。12日の昼に佐渡に到着し、赤泊に着くとすぐに実習が始まります。稽古漬けの3日間が終わると、いよいよお祭り当日になります。

学生:このお祭りは、家々をまわるお祭りなのですか?

中本:基本的にはそうです。

学生:この表現プロジェクト演習に参加した学生も一緒に家々をまわって、太鼓を叩いたりしたのですか?

中本:はい、そうですね。稽古をきちんと積むと当日にはそれなりに形になるんです。当日は、朝5時に宿を出発して、一日祭に参加して、宿に戻ったのは夜11時。一日が終わると、もうみんなクタクタです(笑)一緒にお祭りに参加することでお祭りの雰囲気やお祭りが持っている力、意味を体で感じ取る、そういう授業です。来年(平成27年度)も開講することが決まっています。

現在行っている講義について

学生:中本先生は現在どのような講義をされているのですか?

中本:いま紹介した「表現プロジェクト演習」もそうですし、他には「芸能論実習」というフィールドワークの実習も担当しています。こちらは学生と一緒に新潟県内の民俗芸能を調査する実習の授業です。またゼミの「芸能論演習」では、実際に芸能に関する文献史料を読んだり、議論を交わしたりしながら、芸能の研究方法を勉強しています。4年生はこの授業を通じて卒業論文の研究も進めてもらいます。それから「日本芸能文化論」という講義も担当しています。こちらは古代から鎌倉ぐらいまでの歌謡をテーマとしている授業です。歌謡が古い時代にあってどのように歌われていたのか。実際の楽譜や、その時代の歌われた記録などを通してその場面や状況を具体的に理解し、考察することを目指しています。

学生:講義をされるにあたって意識されていることはありますか?

中本:そうですね、芸能の勉強では、実際に現地に行って調査をするということが欠かせません。たとえば歌舞伎ならば、実際に舞台の歌舞伎を見るということですね。その一方で、一所懸命調査をして帰ってくると、もうそれだけで満足してしまうことが多いんですね。私もそうだし、特にフィールドワークの好きな学生によくみられる傾向かもしれません。フィールドワークの成果を自分の研究に活かすためには、関連する論文や資料をたくさん読んで、何がこのテーマに関して問題なのかということを先行研究から確認することも必要なんです。そのためには、論文を読み解く力はもちろん、古文や漢文を読解する力も必要になってきます。論文を読んだり資料を読んだりというのは、なかなか大変なんですね。どちらかというと敬遠されがちなんだけれども、だからこそそちらに重点を置くということを意識しながら授業をしています。

中本先生の授業風景

中本先生の授業風景

 

先生から見た新大生とは?

学生:では、先生から見た新大生ってどんな感じですか。 

中本:新潟大学の学生は非常に素直で、勤勉だと思います。欲をいえば、それゆえの物足りなさも感じています。もうちょっといろんなことに疑問を持ってもらいたいなと。大学というのは先生の話している内容が全てじゃないですから。先生が喋っているのは一つの学説に過ぎません。唯一の答えを喋っているわけじゃないんです。だから私が講義の中で喋っているのは、私個人の考える芸能なんです。基礎的な事項やスキルなどは、授業を通じて身に付けてもらいたいと思うけども、そこから先、自分なりのテーマを考えたり、自分なりの課題を見つけたり、最終的に卒業論文を書くということを考えたときに、もう少し野心的であってもいいのではないか。先生はこう言うけども、私はこう考えるというところがある学生もいたらいいなと思っていますね。そういうところに多少の物足りなさというか、もうちょっと頑張ってほしいなという気持ちはあります。

高校生のみなさんへ―大学で芸能について学ぶ意義とは?-

学生:先生は芸能について研究されていますが、どのような学生がその分野に向いていると思われますか。

中本:おそらく芸能という分野は、高校までにほとんど習わないですよね。例えば、古文や小説が好きだから日本文学やりたいとか、歴史が好きだから日本史やりたい、考古学やりたい、地理が好きだから地理学やりたいとかね、教科に入口がある分野も多いと思うんだけど、芸能って実は大学入学までに入口がないんですよね。高校時代に芸能をガッツリ習ったていう時期ないでしょ?

学生:ないですね。

中本:そうでしょう、ないんですよね。歌舞伎や能・狂言などの比較的メジャーなものでも、ないよね。高校生までに出会いにくい分野だと思うので、その面白さに気付く機会もなかなか訪れません。私の研究対象は雅楽や舞楽なども含むのですが、どれもどこかで見たことあるなっていう感じだけで、多くの日本人はよく知らないんじゃないかと思います。日本の古い時代の音楽についても、音楽の授業ではしっかり習わないよね。西洋音楽が中心です。みんなベートーヴェンやモーツァルトはよく知っているし、曲もすぐ浮かぶ。その一方で、この国の教育は、高校までの間に日本の芸能をしっかり教えないんです。義務教育ではもちろんだし、高校でもそうだし、下手したら大学まで知らないまま。そのまま一生終わっちゃうんですよ。すごく危機感を覚えています。まずはみんなが西洋音楽について持っている知識くらいには、日本の芸能のことを知ってもらいたいですね。芸能って我々の身の回りにとてもたくさんある。そういうものを一つ一つ確認していくだけでも実は非常に時間がかかるんですが、やはり必要なことだろうと思います。「芸能論」については、高校までに習わないことも1つの理由としてあって、なかなか面白さに気付きにくい分野だとは思うのですが、その中で芸能について関心を持つ学生が新潟大学人文学部で一緒に勉強してくれることを期待しています。

学生:今日はありがとうございました。

中本先生、ありがとうございました!

中本先生、ありがとうございました!

 

インタビューを終えて

明るく陽気な中本先生。あまり生活の中でふれることがないけれど実は身近にある芸能について、動画などを交えながら楽しく語っていただきました。俳人というもう一つの顔をもつ非常に魅力的な先生でした。

 

中本真人(なかもとまさと)先生
社会・地域文化学プログラム。専門は芸能論。奈良県出身。御神楽や歌謡の研究をされており、現在は新潟、特に佐渡の芸能について興味・関心を抱いている。


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