人文学部学生プロジェクトインタビュー「太田紘史」

日時:2015年11月12日 (木)16:30-17:30
場所:総合教育研究棟F583
インタビュアー:永滝華奈(心理・人間学2年)、渡辺昇(西洋言語文化2年)
インタビュイー:太田紘史先生(心理・人間学主専攻プログラム准教授)

太田先生の研究内容について

学生:本日はインタビューにご協力いただきありがとうございます。よろしくお願いします。まず、先生の研究内容について教えていただけますか。

太田先生:「心の哲学」を専門にしています。

学生:「心の哲学」の研究方法とはどういうものですか。

太田:基本的に哲学の一分野なので文献読解に基づいていますが、古典の解釈をメインにはせず、むしろ特定の問題を設定してそれに対する見解や理論を提案したり、あるいは議論をしていく分野ですね。より広く言えば分析哲学という学問の伝統の一部とも言えます。分析哲学全体そういう傾向があるのですが、とにかく論証や議論をつくる、あるいはそれを批判する。そういうディベートに近いものかもしれませんね。

先生の経歴について

学生:先生のこれまでのご経歴をお聞かせください

太田:京都大学で学位をいただいてそのあと東京で研究員を務めた後、この新潟大学に着任いたしました。 

新潟大学で担当されている講義について

太田:まず1学期には、教養科目で「心の哲学」という毎回一つの心の哲学の有名問題を取り上げながら紹介するという講義をしましたね。例えば、第二回は「ロボットに心を持たせることができるか:心身問題」、第五回は「言葉が変われば世界の見え方や考え方も変わるのか:言語」、第九回は「自分のことは自分が一番よく分かっているのか:自己知」といったような問題を毎回一つずつ設定して、それに関してどういう哲学的な議論や理論があるのかを紹介していました。本来哲学という学問は、議論を厳密にすることを重視しているのですが、この講義ではまず、問題の面白さに触れ、理解してもらい、そして自分でどんどん思考を深めていく、そんな授業にするように心がけました。
2学期の担当授業はいくつかありますが、「西洋近現代哲学史」という講義を担当しています。近代イギリスの経験論から現代英米の分析哲学に至るまでの流れを講義しています。哲学の歴史の入門書などでは人物像が非常に詳しいことがありますが、そういった内容は一切扱いません。各哲学者が提案した議論や理論の内容を理解することにすべてを尽くしています。
 また一年生向けの「人文総合演習」では、グループごとに、現実の社会で起きている倫理問題について調べ、研究し、発表してもらうという授業を行っています。出来るだけ学生の皆さんに主体的に学ぶ態度を学習してもらえるようにして、例えばプレゼンテーションに対する評価基準なども皆さんに議論しながら作ってもらっています。審査表を作るとか、その中でどういう評価項目を設定するか、それをどうやって点数化するか。すべて学生自身が能動的に行動しなければ成立しない授業になっています。

学生:学生が主体的な授業なんですね。その授業では、どういった倫理学を扱っているのですか?

太田:倫理問題のグループ分けには例えば、環境倫理、生命倫理、戦争倫理というものがあります。その中で、自分自身で問題を設定するとしたらどういう設定をするのかについて考えます。例えばあるグループでは、兵器開発の倫理という問題設定をして、現状としてどのように兵器が多様化しているのかとか、戦争での兵器の使用に関してどのような規制が生まれているか、そして望まれているのかといったことについて研究しています。 


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哲学をこれから学びたい方へのメッセージ

学生:最後にご担当の分野を目指す人にメッセージをお願いします。

太田:哲学はしばしば抽象的な議論や研究になりがちなのですが、その背後には実は具体的な問題や動機というものが必ずあります。それは、実はよく知られたものかもしれないし、あるいは非常に個人的なものかもしれないのですが、まずはこのような問題をはっきりと自分の中であぶり出すことができると哲学に入っていきやすいのかなと思いますね。
 だって、哲学書を試しに読んでも読者は全然わからないわけですよ(笑)。非常に抽象的で思弁的でよく分からない題名が並んでいて、例えばデカルトの『方法序説』でもそうで、「なんでこういうことにこだわるのか」というように一見見にくく、分かりづらい。でも例えば「心と脳が一体何で関わり合うのだろうか」いうような問題意識を自分自身で持っていると、それを軸にして、非常にスムーズに哲学の議論に入っていくことができます。
 もちろん問題意識を持つことはあらゆる学問に必要ですが、ただ他の学問だと、例えば実験心理学や分子生物学では、問題のパターンがかなりはっきりしています。「この遺伝子の機能が分からないから、こういう実験で調べてみよう」とか、「人間の心理メカニズムとしてはこういう仮説があるけど、それを検証するためにこういう刺激を与えてみよう」とか、問題を立てやすいし、明確にしやすい。でも、哲学は必ずしもそうではない。問題を自ら見つけていける人だと、哲学を学びやすいかもしれませんね。 

インタビューを終えて

心の根本的な問題について考える心の哲学。「心とは何か。」という問いはシンプルでありながら、非常に複雑な問題であると思います。太田先生は本などを用いてわかりやすくお話してくださり、学問に対する熱意を感じました。

担当:永滝華奈(2年)、渡辺昇(2年)

 太田紘史(おおた・こうじ)先生
心理・人間学主専攻プログラム。専門は心の哲学。東京大学で研究員を経た後、新潟大学人文学部の准教授として2015年に着任。


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