新潟大学人文科学奨励賞 阿部賞

2010年度受賞は細田あや子准教授の『「よきサマリア人」の譬え』

8月4日(水)に「2010年度新潟大学人文科学奨励賞 阿部賞」の授賞式が人文学部長室で行われました。今年度の受賞者は細田あや子准教授(西洋中世美術史)で、受賞対象は、細田准教授の著書『「よきサマリア人」の譬え 図像解釈からみるイエスの言葉』(三元社、2010年)でした。

この賞は,新潟大学における人文科学系の研究の振興を目的として、2006年度に阿部洋一氏の寄附金を基に人文学部が創設したもので、今回で5回目を迎えます。

人文学部研究推進委員会による選考理由は以下の通りです。

「細田あや子著『「よきサマリア人」の譬え 図像解釈からみるイエスの言葉』は、著者がハイデルベルク大学に博士論文として提出し、2002年にドイツ語で出版された書をもとにその後の文献をも考慮し手を加えて出版されたものである。本書は、ナザレのイエスが人々に「譬え」を用いて語ったさまが聖書に記されている点に着目し、中でも作例が比較的多く残されている「よきサマリア人」の譬えに注目し、福音書のテクストがいかに画像として表現されたかを問うた大著である。本書の特徴は、第一に、福音書におけるイエスの譬えを教父時代、中世神学に遡り、文献学的に詳細に分析している点であり、第二に、「よきサマリア人」の画像の表現方法・表現形態を丹念に読み解き、その多義的構造を明らかにし、さらには、それらの画像がどのように伝達され、受容されたかという画像によるコミュニケーションの問題にまで説き及んでいる点である。多くの信者が文字を読むことができなかった時代に「声の文化」のなかで図像が、朗読、身振り、そして視覚によって「身体的に」重層的に理解されたという著者の指摘は鋭い。西欧文化圏のみならずビザンティン文化圏をも包括した多数の図像を緻密に読解した本研究は画期的な業績であり、高く評価できる。」

2009年度受賞は石田美紀准教授の『密やかな教育』

8月5日(水)に「2009年度新潟大学人文科学奨励賞 阿部賞」の授賞式が人文学部長室で行われました。今年度の受賞者は石田美紀准教授(映像文化論)で、受賞対象は、石田准教授の著書『密やかな教育――〈やおい・ボーイズラブ〉前史』(洛北出版、2008年)でした。

 この賞は,新潟大学における人文科学系の研究の振興を目的として、2006年度に阿部洋一氏の寄附金を基に人文学部が創設したもので、今回で4回目を迎えます。

人文学部研究推進委員会による選考理由は以下の通りです。

「石田美紀氏『密やかな教育〈やおい・ボーイズラブ〉前史』は、七0年代における現代日本サブカルチャーの黎明期に焦点をあて、サブカルチャー的少女文化の生成という観点から、マンガ、小説、映画批評など多領域にわたる女性表現者たちの実験や思索の軌跡、及びそれらを支えた雑誌媒体の役割を精緻に分析した労作である。石田氏は、時代に先駆け、既成の公的な制度の外で思考や表現を続けた作家たちの仕事を、同時代の文脈に丹念に位置づけ、その歴史的射程を再評価する。その分析手続きは周到かつ説得的であり、結果、本書で描出された日本のサブカルチャー生成史は、きわめてスリリングなものとなった。本書は〈女こども〉文化と呼ばれ、周縁に追いやられた文化の担い手たちの復権のための宣言であるとともに、〈サブカルチャー〉と〈文化〉という二項対立をめぐる私たちの通念を異化してやまない知的挑戦の書である。阿倍賞受賞にふさわしい、人文学の新たな可能性を開く著作である。」

2008年度受賞は松井克浩教授の『ヴェーバー社会理論のダイナミクス』

8月6日(水)に「2008年度新潟大学人文科学奨励賞 阿部賞」の授賞式が人文学部長室で行われました。今年度の受賞者は松井克浩教授(社会学)で、受賞対象は、松井教授の著書『ヴェーバー社会理論のダイナミクス―「諒解」概念による『経済と社会』の再検討―』(未来社、2007年)でした。

この賞は,新潟大学における人文科学系の研究の振興を目的として、2006年度に阿部洋一氏の寄附金を基に人文学部が創設したもので、今回で3回目を迎えます。

人文学部研究推進委員会による選考理由は以下の通りです。

「松井 克浩氏の著書『ヴェーバー社会理論のダイナミクス 「諒解」概念による『経済と社会』の再検討』は、ヴェーバーのテクストを緻密に再検討し、その結果、「近代批判」の視点からの、近代の帰結としての官僚支配による「鉄の檻」論に対し、彼の社会理論が「合理化された社会の動態的で重層的な存立構造論」(17頁)として読み解くことができるとし、彼の社会理論が「別様の社会の存立を探求するための潜在的可能性」(22頁)を内在していると指摘する。このような読解によって松井氏が、日本で長い歴史をもち蓄積のあるヴェーバー研究に新しい視点を付け加えたことは高く評価できる。」

授賞式の模様は、新潟大学のサイトでも報じられています。


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