新潟大学人文学部

学部長あいさつ

タフな知性を身につけよう

人文学部長 松井克浩

大学生と話をしていていつも感じることは、その「優しさ」と「真っ当さ」です。私自身の学生時代を思い起こしてみても、いまの学生さんの方がずっと多様性に理解があり、他者に細やかに気遣いができ、「正しさ」に価値を置いているように見えます。こうした資質をベースとして持っていることは、皆さんの強みに違いありません。それでは、大学はそんな皆さんに何を付け加えることができるのでしょうか。 

それは一言でいえば〈複眼的なものの見方〉だと考えています。たとえば外国の言葉や文化を学ぶことは、自分とは異なる思考法を身につけることにつながります。また、過去の歴史を学ぶことによって、異なった角度から現在を見つめ直すことができるでしょう。目に見えない人間の心や意識を科学的にとらえる方法を知ることは、他者に向ける眼差しに変化と深みをもたらすかもしれません。 

人文学部で学べるさまざまな学問は、私たちの「ものの見方」を次々と更新し、立体的なものにしていきます。ものごとを平板に理解して済ませるのではなく、複雑な課題を複雑なまま粘り強く考えていく力。それは、現代社会を皆さんがタフに生き抜いていくための武器となるでしょう。私たちは、優しさに加えて知的なタフさを、皆さんに身につけてもらいたいと考えています。 

人文学部には多くの専門分野があります。とくに最初のうちは、できるだけ広く学んで下さい。2年生から主専攻プログラムに進みますが、その一つ一つがゆったり広めに設計されています。また新潟大学は、学部の枠を超えた「副専攻プログラム」にも力を入れていて、自分の好奇心に応じて本当に幅広く学ぶことができます。 

最終的には特定の専門分野を選び、ゼミで関心を共有する仲間と議論し、その専門を深める形で卒業論文を書いてもらいます。これまで広く学んできたことも生かしながら、自分の背骨となるような深い探求を目指すのです。広い学びと深い学び、それによって身につく複眼的な思考とタフな知性は、皆さんの一生の宝物になるはずです。 (2024年6月)