人文学部長 松井克浩
キャンパスに学生の声があふれる春が、ようやく戻ってきました。コロナ禍によりリモートで行われてきた授業が徐々に対面に切り替わり、今年度からはほぼ全面的に対面授業が実施されています。新型コロナが完全に収束したわけではないので注意しながらですが、広場や廊下ですれ違う学生たちの笑顔に接すると、こちらまで楽しい気持ちになります。この3年間の経験によって、教員と学生あるいは学生同士がキャンパスで直接顔を合わせてコミュニケーションすることの大切さに、あらためて気づくことができました。
大学では、自分の学びたいことを自由に学ぶことができます。人文学部ではとくに、学びを通じて皆さんに二つのことを身につけてほしいと願っています。一つは、視野を広げて多様なものの見方ができるようになること、とくに自分とは異なる立場を想像し、その考え方を理解できるようになること。もう一つは、迷った時につねにそこに立ち返ることができるような、自分の背骨となる思考の軸をつくることです。
人文学部には多くの専門分野があります。とくに最初のうちは、できるだけ広く学んで下さい。授業でも読書でも、そこにはさまざまな出会いや思いがけない発見があるはずです。2年生から主専攻プログラムに進みますが、その一つ一つがゆったり広めに設計されています。また新潟大学は、学部の枠を超えた「副専攻プログラム」にも力を入れていて、自分の好奇心に応じて本当に幅広く学ぶことができます。複眼的な思考を身につけると、ものごとが立体的に見えてきます。
そうやって視野を広げることはとても重要なのですが、自分の「軸」がないと、どんどん拡散して、収拾がつかなくなるかもしれません。人文学部では、最終的に特定の専門分野を選び、ゼミで関心を共有する仲間と議論し、その専門を深める形で卒業論文を書いてもらいます。これまで広く学んできたことも生かしながら、自分の背骨となるような深い探求を目指すのです。広い学びと深い学び、それを駆動する好奇心と想像力は、皆さんの一生の宝物になるはずです。(2023年6月)