新潟大学人文学部

トピックス

グローバル化とDX化に呼応する新人文学部科目の開設について

掲載日:2023年04月30日


2023年度から、グローバル化とDX(デジタル・トランスフォーメーション)に対応する複数の専門科目が人文学部に新設されることとになりました。以下、紹介をしておきます。

Transcultural Encounter(異文化交流)

まずひとつの科目群は、学生たちと留学生たちが一つのクラスで学び、日本語や英語、あるいは初修外国語で学んだ言語を用い、多文化環境で協働しあいながら課題を解決していくことを目的とするものです。文化や歴史など多様な背景を持つ学生同士が相互に歩み寄り(transcultural)、出会って(encounter)いくことから、Transcultural Encounter(「異文化エンカウンター」)と名づけられました。授業では、日本語と英語、あるいは、日本語と中国語、日本語とフランス語など、人文学部生は初修外国語インテンシブ・コースで一年次に学んだ言葉を用い、日本語・外国語の両言語でのディスカッションやプレゼンテーション、プロジェクトの共同実践等を中心に進め、キャンパスのなかでの異文化交流を通じて、留学経験に準じるような文化接触を促進させます。二年生向けの基礎講義はイントロダクションとして、第五セメスター以後に履修できる発展講義では、より高次の交流を進めていくことを予定しています。

グローバル化の進展にともなって、国内外で多様な言語話者がともに同じ地域社会で暮らし、働き、サービスや情報を共有する場面は今後ますます増えていきます。そのなかで着目されるようになったのが、「文化コンピーテンス」(Cultural Competence)と呼ばれるグローバル化・複文化対応力です。文化の違いへの感受性や、異文化集団のなかでのチームワークやリーダーシップのスキル、グローバル社会に求められる他者への包摂的・寛容的な市民意識を総合したものです。Transcultural Encounter科目群は、国際共修とよばれる能動的・複文化的な学修により、留学生・日本人学生がこうした力をともに身につけていくことのできる授業です。

デジタル情報文献学研究法

他方、デジタル技術の進歩やインターネットの普及が、世界的規模で大量のデータを日々産み出している現在の動向に呼応する形で,DX(デジタル・トランスフォーメーション)教育が本学でも重点分野として強化されることとなりました。これにともない、全学で一年次のデータ分析科目が必修化されています。多様で広汎な資料研究を柱の一つとする人文学分野においても、デジタル化の展開と深化に呼応した新たな知識や技術がこれから必要になってきます。ビックデータの計量的分析はもちろんのこと、たとえばデータの収集や保存を通じて公共的なデジタル・アーカイブを構築するためにはどうすればよいのか。電子情報のデジタル・パプリッシングにはどのような将来があるのか。異なる研究領域間でデータを共有し、研究成果を多角的に検証し、データ解析の信頼度を高めるスキルはどのようにえられるか。これらはみな、デジタル情報化された文献の比重が今後ますます高まることはうたがいえない人文学分野では、きわめて必要性の高い技術となります。先に述べたグローバル化の進展は、人文学が扱うデジタルデータの共有と伝播、利活用においても、大きなインパクトを持っています。

来年度から新規に開設する「デジタル情報文献学研究法」では、こうしたデジタル・アーカイブの考え方、オープンアクセス出版の方法論、オンラインデータの分析の実際など、「デジタル・ヒューマニティーズ」(デジタル人文学)の基礎的な知識を、学生たちは体系的に学びます。人文学においては文献情報はいかに扱われるべきかを振り返りながら、プログラミングやデータサイエンスの知識、また著作権や個人情報等の理解など、自然・社会科学におよぶ総合的な新たな知識の組み立てが求められることでしょう。

グローバル社会の進展とともに異なる文化背景をもつ人びととの協働する能力がこれからはますます必要になります。また、人間とごく自然に対話することが可能なAIの登場など、世界のデジタル化の動きも加速化し、新たな段階に入ったとみてとれそうです。今回紹介した科目は、本学部の学びを新しくデザインしていくため、人文学部が今後本格的に取り組んでいくべき研究・教育上の柱の一つとして、再編・新設することになったものです。

(記/逸見龍生、『学部だより』2023年版より転載)

一覧へ戻る